鍵の豆知識

鍵と錠前の歴史

鍵の歴史で一番古いとされているのは、紀元前200年ごろに古代エジプトで利用されていたエジプト錠という木製の鍵です。それ以前は複雑に絡めた紐を鍵として利用していました。その後は中世ヨーロッパで発達したウォード鍵、タンブラー錠など歴史と供に鍵と錠前は進化し続けます。

日本で最古の鍵は1988年に大阪府羽曳野市の野々上遺跡で発見された海老鍵です。今と違って江戸時代の治安が良かったため、鍵の必要性がなかったようです。せいぜい富裕層が所有する蔵に利用されるくらいで、防犯性もそれほど高くなかったと言われています。それ以前は岩石や丸太で穴をふさぎ、動かすときはこん棒をテコにしていました。岩石が「錠」、こん棒が「鍵」のはじまりです。

鍵と錠の違い

日本では日常的に鍵と錠をひとまとめにして「鍵」と呼びますが、正確に言うと鍵と錠は異なります。錠は扉や壁、引き出しなどに固定されている閂を意味します。鍵はそれを解くための道具です。

よって「家に鍵を掛ける」ではなく、本来は「家に鍵を使って錠を掛ける」というのが正しい言い方になります。英語で表記すると鍵はkey、錠はlockなので、より想像しやすくなるでしょう。ちなみに、鍵と錠をセットにすると「錠前」という呼び方になります。

開錠・解錠

開錠とは、鍵のかけられた錠または施錠されている鍵を手段に関係なく開けることです。そのため破壊や特殊な工具などを用いて開ける場合も開錠の意味に含まれます。また施錠が反対の意味を指す言葉になります。

コンピューターやサーバーといったIT関連のアクセスの場合でも同様の意味で用いられますが、こちらの場合は電子的な暗号で鍵をかけてアクセス制御する場合に用いられます。また、IT関連で用いられる場合の反対の意味を示す言葉も施錠になります。

解錠とは、鍵のかけられた錠を鍵を使って開けることです。そのため破壊や特殊な工具を使って錠を開ける場合は含まれず、鍵を使用する場合でも合い鍵の場合は含まれません。解錠に近い意味を持つ言葉として非常解錠装置がありますが、こちらは緊急時に色々な手段を用いて開くことができる錠を指しており用途も屋内の鍵の必要になる部屋(トイレ・浴室など)で多く使われています。

ピッキング法

錠前を正規の鍵を使わずに棒状の器具を用いて開錠する行為をピッキングといいます。

20年前ぐらいから、ピックと呼ばれる棒状の器具が出回るようになり、外国人などによる不法侵入事件が頻繁に起こるようになりました。そういった事件への対策として制定された法律をピッキング法といいます。

この法律では特殊な開錠用具を所持すること自体を禁止しています。つまり、ピックを持つこと自体を禁止しているのです。正規に届出を行った業務の場合は大丈夫ですが、それ以外の場合は携帯することを赦されません。もし、自分で作ったものを持っていても取り締まりの対象になってしまいます。そのため、工作の対象として自分で鍵や錠前を作る場合にも注意が必要となります。

鍵のパーツ

フロント

多くの家庭で利用されている鍵は、ドアに鍵パックを固定する埋め込み形で取り付けられていることが多いです。つまり、通常のドアに鍵パック本体を埋め込むための穴を開け、そこに鍵の本体や部品を取り付けることで防犯などにも優れた機能を有する鍵となる訳です。

そして、鍵パックをドアに埋め込むとフロントを見ることができます。フロントというのは、鍵パックケースの外側にある板のことを言い、ドアの肉厚部分を眺めてみると見ることができる物です。

フロントの役目は、鍵をかけるときに飛び出るデットボルトとドアが風圧などで自動的に開くのを防ぐラッチボルトのガイドをする役目があります。つまり、それがあることで鍵の機能を十分に果たすようにできる訳です。

またフロント部分は金属製でできているのが一般的ですが、その部分には錠のメーカー名や型式記号、品番号等が刻印されております。仮に故障や部品を交換する必要性が生じた時には、その部分を確認することで適切に対応することが可能となり、重要な情報を与えてくれる板となります。

ケース(錠箱)

ケースは錠箱とも言われており、錠前の前方にある箱の形状をしたパーツです。その中は鍵の開閉を行うための機械的な構造になっています。ケースには二つのタイプがあります。

一つ目はドアの中央部分に内蔵させる彫込型です。このタイプを使用したものは鍵周辺が整然とした見た目になります。ドアの内部にケースを入れてしまうことにより、外部からは目にすることが無くなります。そのため、屋内で施錠を行いたい箇所によく使われます。

もう一つのタイプは面付型と呼ばれるものです。これはドアの内側に錠箱が見えるタイプで、錠が彫込型より奥側にあることから外から壊されにくい構造になっています。そのため、防犯性の高いケースといえます。

ラッチボルト

どんなドアでも、一度閉めたら手で取っ手を動かさない限り固定されていることが大切です。ラッチボルトとは、ドアを簡単に開かないように仮締めを行う部品のことを言います。形状は三角形の形をしていることが多いです。ドアを閉めた状態で手でドアを押しても簡単に動かないのは、ラッチボルトが利いているからです。

ドアを開けるにはドアの取っ手を掴んで動かして、手で押さなければなりません。ラッチボルトは取っ手横のドアの厚みの部分に取り付いている部品で、ドア枠側にはストライクプレートという金属でできた受け座が取り付けられ、それと一体となり機能します。

ラッチボルトがないと風圧によって、簡単にドアが開いてしまいます。ラッチボルトの構造はスプリングを利かせてドアから突起として常に飛び出す仕組みになっており、閉まる時はラッチボルトがストライクプレートの金属のふちに当たって、スプリングが縮んでスライドしていき、穴部分で再び伸びて閉まります。そして開ける時はドアの取っ手を回転させて、スプリングを引っ込ませて開ける形となります。